19世紀に西欧を怒涛のごとく巻き込んだジャポニズム。
その波頭こそ、江戸末期から明治にかけて出版された絵手本「北斎漫画」だった。
天才・葛飾北斎の歴史的ベストセラーを現代の絵手本帖として再編集。
全15巻、総頁970、約4000カットを完全収録。
あらゆる主題、モチーフ、描法―画狂人・北斎の魅力が凝縮。
最高精度の版下・印刷で現代によみがえらせます。
僕にとって浮世絵は「日本的」という意味では「ヘソ」。
とくに北斎の存在感はひときわ大きかった。近代的自我はおろか、
現代人にも直接つながっていくようなエゴイスティックな表現欲や
芸術に対する強い野心を北斎には感じましたね。
…北斎の線を見ると、彼は、毎日毎日、まるで中毒のように描きまくっていたのではないかと思います。
まるで“絵中毒”、“ドローイングジャンキー”のように。
コミカルなものとシニカルなもの、俗っぽいものから優雅なものまで、
こんなに使い分けられる画家は他にいたでしょうか。
北斎は、一瞬をとらえ、それを一瞬のうちに描き切っている。
…『北斎漫画』からは、サッと描くカッコ良さや、洒脱さ。玄人受けする「枯れ」のようなもの。
言って見れば酸いも甘いも噛み分けた「大人の美学」を感じますね。
…『北斎漫画』が江戸後期から幕末の時期につくられていたのだとしたら、
日本的な、こういった「ダメなものを尊ぶ」感覚の頂点を極めた時期だったのかも知れませんね。
北斎はある意味、日本人離れしています。徹底して押し通していくあの自我。
森羅万象、ミクロからマクロまでみんなまとめて串刺しにしてしまうような自我の強さがある。
…自分というものはこういうものだと限定しないで、無限に拡張し続けていくスケールの大きさ。
コンセプトを持つとそれが限界になってしまうけど、北斎はそんな考えさえからも自由だったんですよね。
協力:浦上蒼穹堂
解説:永田生慈
アートディレクション:祖父江慎